3・11に生まれた君へ~「君の椅子10年展」セミナー&朗読会を開催しました

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毎年、3月11日を迎えるたびに思い出す
忘れられないイベントがあります。

2011年3月11日。
あの日失ったかけがえのない命がたくさんあった一方で、過酷な状況の中、福島、宮城、岩手では、104の命が産声をあげていました。
その「希望の命」が今年で5歳を迎えるんですね・・・。
私は友人を通して「君の椅子」プロジェクトという素晴らしい取り組みを知りました。
そして彼女の熱いに共鳴し一緒に昨年10月、「君の椅子10年展」のセミナー&朗読会を行いました。
代表である磯田憲一氏を北海道からお招きし、この取り組みへの想いをたくさん語っていただきました。


『生まれてきてくれてありがとう。君の居場所はここにあるからね』
そんなメッセージが込めれた小さな椅子。
生まれてきた子どもたちに、旭川家具の職人さんたちがひとつひとつ丁寧に作った椅子を贈る取り組みです。子供の成長とともにそっと寄り添う椅子。
愛されて育ったという思い出の記憶が刻まれる椅子です。
そのプロジェクトの中で特別な椅子があります。
「希望の君の椅子」と名付けられたその椅子は、2011年3月11日に東北3県で生まれた104の命の内、名前の判明した98のご家族のもとに届けられた椅子です。
2011年12月から翌12年2月末にかけて、磯田さんがそのご家族のもとへ一脚一脚大切に届けに行かれました。
その時あるお父さんは、「喜んでいいのか悲しいのか、思い惑う毎日だったけれど、この椅子をもらって初めて喜んでいいのだと思えた」と語り、あるお母さんは「この子はこれまでおめでとうと言われたことのない子だった。でも今日初めておめでとうと言ってもらえたような気がする」と涙ぐまれたそうです。

また、「震災の子なんでしょ、と言われることが多かったけれど、(磯田さんが)希望の子なんだよと言ってくれて、とても楽になり救われた」と語るお母さんもいらっしゃたそうです。

その椅子を受け取ったご家族のうち29のご家族が、磯田さんの想いに応え、「あの日」がどんな一日だったのかを綴った手記を寄せてくださいました。
その大切な原稿を8カ月の歳月をかけて記録文集としてまとめられたものがこちらの本です。
当事者自らが綴った記録は、多くの震災関係の本の中でも、大変貴重な一冊になることでしょう。

新たな命の誕生は家族にとってこの上ない幸せに包まれる日。
けれどあの日、身近であまりに多くの命が失われたことを想うと、そこにはご家族の大きな心の葛藤がありました。
そんな、ご家族当事者でなければわからないあの日の想いが、率直に綴られています。

寄せられた手記の一部です。
「友人が持ってきてくれたミルク。見知らぬ遠い北の街から届けられた、小さな椅子と絵本。たくさんの優しさに包まれて、あなたは生まれてきたんだよ」
「何もなくなった大地に少しずつ根を張って、、風にそよいで笑って咲く花のように育ってほしい」
「どんな困難でも命があればきっと乗り越えられる。どんな人生も、命がなければつないでいくことはできない。たった一つしかない自分の『命』を大切に守ってほしい」

どの手記にも涙が止まりませんでした。
この「希望の君の椅子」を制作するにあたり、北海道に住む小さな子供たちがお小遣いを出して協力してくれたり、貯金をくずしてくれた方もいらっしゃったそうです。

このプロジェクトに出会い、この本を手にできたことは、私の人生にとっても大きな意味がありました。
「あの日」に誕生した命は、きっと今日も確実に明日に向かって、成長していることでしょう。

今日という日を、みなさん様々な想いで迎えていらっしゃることと思います。
あの日亡くなられた方たちへのご冥福を心よりお祈りいたします。
また、今なお行方不明の方がお一人でもご家族の元へ帰れますように・・・。
そして、あの日生まれた子供たちがたくさんの愛に包まれて、この「希望の君の椅子」とともに強くたくましく生きていってくれますように・・・。